#31
つたわるノート

ハラスメント発言にどう向き合うか書き手:森田汐生(アサーティブジャパン 代表)

パワハラ、セクハラ、アカハラ、マタハラ、家事ハラ、オワハラetc...。ハラスメントにかかわる社会の意識が高まってきています。言葉の認知が高くなり、「これを言ってはいけない」「あの言葉はNG」という認識は広まってきましたが、実際に差別発言を受けたり、見聞きしたりした時の、その場の対応は簡単ではありません。

ハラスメントで共通しているのは、社会的に「優位」とされる側に立った人から、そうでない立場の人への、対等ではない(下に見た)関わり方です。従って、ハラスメントの防止とは、本質的に私たちが、尊厳ある一人の人間として自分と相手を対等に扱い、お互いの人権を尊重できるかどうか否か、という私たちの意識と深く結びついています。

ハラスメント予防を「言葉狩り」としてとらえるのではなく、私たちの他者と関わる姿勢として、アサーティブ的に考えるとどうなるのでしょうか。つらつら考えておりますが、コミュニケーションの点とマインドの点で次のようなものなのかな~と、現段階では思っております (あくまで、何気ない差別発言について述べていきます)。

〇差別発言を直接言われた時には、なるべく早い段階で相手に自分の正直な思いを伝える

相手が悪意を持って攻撃してくるとき(明らかに"ブラックの"ハラスメント発言)は別として、何気ない差別的な一言を言われることでも私たちは傷つきます。そんな時は、発言した本人に直接自分の気持ちを、早い段階で伝えた方がいいでしょう。

「その言葉、私は嫌です」「それって、正直傷つくんだよね」「その言い方、自分は好きじゃないな」など。相手が一人である時をねらって、直接本人に、率直に伝えます。

伝える時は、なるべくサラリとさわやかに。怒りに燃えて反撃したり、ねちっこく責める言い方ではなく、明るく"サラリ"、がポイントです。

早い段階でというのは、回数が重なってくるほどに、伝えるためのエネルギーが大きくなり、思い切って言おうとすると攻撃的になってしまうからです。言わなかった回数が過去に多いほど、「あの時も、この時も」と過去をひっくるめて相手に反撃したくなり、その結果、相手の態度を硬直化させてしまいますので、ご注意を。

〇別の人への差別発言は、きっぱりはっきり「No」と伝える

ハラスメントは当事者同士の問題にとどまらず、それを許している環境、見て見ぬ振りをしている周囲の人たちが、問題を更に悪化させます。なので、発言を見たり聞いたりしたときは、これも早い段階で本人に直接伝えます。

関西弁には「それはアカン」という素敵な表現があるのですが、東京弁ではなかなか難しくて迷いますが、妥当なのは「それは、まずいよ」などという感じでしょうか。事実をはっきりと指摘し、率直に、対等に、そして思いやりをもって伝えてみて下さい。

上の二つは、伝え方がとっても難しく、責め口調か遠回しな言い方になってしまうので、アサーティブに言うには練習が必要となります。

〇自分をおとしめない

差別発言を受ける側になるということは、ある意味社会的に「優位ではない立場」に置かれるために、たとえ言った側と言われた側が一対一であったとしても、必然的に一対多の構造の中に投げ込まれます。差別発言は社会的な優位性と多数性とともに発せられますので、受ける側にとってはとてもとてもダメージが大きいのです。

アサーティブに差別発言に向き合うためには、何よりも自分という存在に対する誇りを忘れないことが大前提です。たとえ社会的に劣位である(立場や職位、年齢が下、少数者・マイノリティである、所有や経験が少ないなど)場合であっても、どんな時でも自分への"人間としての誇り"を失わないこと。

そこに立っていれば、相手の「優位vs劣位」のパラダイムに足をすくわれることなく、毅然として相手と対等に向き合うことができるようになるでしょう。

〇相手を責めない

差別発言をしてしまう人を、「人としてどうなの?」と批判したり、思い知らせるために攻撃し返すことは、あまり効果的ではありません。発言者を批判的な目で見るのを止めて、「この人は単に知らないだけかも」というくらいの慈しみの目で見てみる(難しいですが!)。

相手の差別発言や弱点、欠点、無知が本当の問題ではありません。問われるのは、それに対して私たちがどう振る舞い、どんな対応を選択して、将来に対して何をするのか、ということ。

差別発言に対して、攻撃的に反応することもできれば、言葉を飲み込んで恨みをじっと抱えることもできる。でも、相手を責めることなく思いやりを持って、その発言がどんなに人を傷つけるかを、誠意を持って教えることもできるのです。

アサーティブでお勧めしているのは、「相手を味方につけるつもりでコミュニケーションを取る」ことです。攻撃し返して相手を更なる敵に仕立て上げるのではなく、相手をこちらの味方にする。その意識を持つだけでも、こちらの伝え方は大きく変わります。

〇自分も加害者になる可能性があることを意識しておく

ハラスメントや差別発言から全てにおいてクリアーになることは、この社会に生きている限り難しいんじゃないかと、私自身は思っています。どんなに気をつけていても、意識していても、自分が相手との関係の中で「優位」に立ってしまうことは、充分にあり得ること。

なので、自分も加害者になるかもしれないことを意識しておきましょう。

思わぬところから「あなたは加害者だ」と言われることもあります。その時に、防衛的に反撃するのではなく、どんなに心当たりがなくても、相手の感じたことを尊重し、「それくらいのことは許容すべきだ」という考えは捨てて、「それは申し訳なかった。あなたの気持ちを傷つけてしまったことは、本当にごめんなさい」と、誠実に答えることができるように、心の準備をしておく必要があるのでしょう。