#18
つたわるノート

相手には相手のストーリーがある書き手:森田汐生(アサーティブジャパン 代表)

相手の行動や振る舞いにカチンとくるとき、「なんで自分にだけ」「自分は敵意を向けられたのか」と感じてしまう時があります。

例えば、
同僚に話しかけてもよそよそしい感じで、なんとなく避けられている感じがする
上司が自分の仕事にいちいち口出しをしてきて、うるさい
取引先のお客さんが、明らかに上目線で話しかけてくる
パートナーがいつもと違ってイライラしている、話しかけても上の空

それに対してカチンとくると、開口一番「なんでなの?!」とついついケンカを売ってしまうことになるでしょう。
 
そんな時に覚えておくといいのは、「相手には相手のストーリー(事情)がある」、ということです。

相手がある振る舞いをするからといって、必ずしも自分に敵意がある、とは限りません。相手には相手の事情やストーリーがあり、その事情はこちらの思いも及ばないところにあるのかもしれません。その場の行動や言葉尻をとらえてむかっ腹を立てるのではなく、一呼吸おいて「相手には相手の事情がある」と考えてみるのも、怒りをしずめる一つの手です。

例えば、前述の事例であれば、

同僚に話しかけてもよそよそしい ⇒ 同僚は今の担当業務について深く悩んでいる
上司がいちいち口出しをしてくる ⇒ 異動してきたので自分と関係を作ろうとしている
取引先のお客さんが上目線で話す ⇒ その人は誰に対してもそんな態度を取る人かも
パートナーがイライラしている  ⇒ 今日は仕事で大変なことがあって疲れている

ということなのかもしれないのですよね。

相手の行動や振る舞いによって、「自分は被害者になった」と感じるのは、腹も立つし傷つくものです。しかし、そこで一呼吸おいて、「相手には何か事情があるのかも」、「その人はそもそもそういう人で、自分だけが対象ではないのかも」と思うことで、怒りに足元をすくわれることを避けることができます。

相手によって自分の怒りが「引き起こされた」と感じると、自分は「被害者」となり相手が「加害者」になってしまいます。自分が被害者になると、自分では何もできない"無力な自分"になるので、傷つき、腹がたつのです。

そうではなくて、相手には相手のストーリーがあるということ。相手によって自分の怒りが引き起こされたのではなく、自分が相手に反応しているだけ。だから、ちょっと心の距離をとってみようと意識すると、状況は違って見えてくるかもしれません。

相手によって引き起こされた怒りに支配されて、無力な被害者になるのではなく、自分の怒りは自分のモノ、出すも出さぬも自分が決める、くらいに腹をくくると、状況に振り回されない自分になることができるかもしれませんね。