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AJ代表日記

アサーティブジャパン代表の森田汐生が、講座での感想や、日々の生活の中で感じたアサーティブネスにまつわるエピソードをアップしていきます。
過去の記事はこちらからどうぞ。

相手の力を信じること

カテゴリー:講座から

2015.07.31

研修の中で出てくる個人のストーリーには、どんなアサーティブの理論よりも「対等性」に関する真実が含まれていることがあります。

アサーティブの土台にある対等性とは、別の言葉で言えば、自分と相手の人間の尊厳を心から信じて相手と関わること、になります。

先日もある研修中、「今も忘れられないほめ言葉」というテーマで、ある参加者の女性が話をしてくれました。

それは、彼女が9歳の時のこと。

それまで彼女は、自分に自信がなくて自己主張ができず、友だちにもあまり話しかけることができなかったそうです。気の強い友だちにいじわるをされたり、悪口を言われたりで、いつも泣いてばかりでした。周りの先生や家族からは、「大丈夫、大丈夫」と慰められ、「いいからね、無視しておけば。かわいそうに」と、守られていたのだそうです。

ところが、3年生の担任の先生は違いました。

彼女に対して、「いじわるする人には、ちゃんと自分で意見を言わなくちゃダメよ」と、厳しく接しました。最初のうち、彼女はその先生のことが大嫌いでした。

でもある日、その先生の言葉に従って、いじわるした友だちに、自分の気持ちをはっきりと伝えました。「それを知った先生は、本当に、本当に喜んでくれて。教室でもみんなの前でほめてくれたし、母にまで電話をして、私のことをほめてくれたんです」。

それ以降、彼女は変わりました。自分に自信をもって主張してもよい、自分はOKなのだと思えるようになり、何かあった時は本人とちゃんと向き合って話すことができるようになったそうです。

大丈夫、大丈夫、と慰めてあげることは、必ずしも優しさではなく、むしろ相手を無力にしている可能性がある。そうではなく、例え厳しい言葉であったとしても、相手の持つ力を信じて、まっすぐに対等に関わることの方が、本当の優しさになるということを再認識したストーリーでした。

アサーティブの「対等」には、相手を対等な人間として見ること、尊厳ある人間として関わること、という意味があります。にもかかわらず、何かにつまずいて「できない」と苦しんでいる相手に対して、私たちは「優しさ」や「思いやり」という善意でもって、結果として相手を無力な人間に仕立て上げていることがあるように思います。相手を傷つけないように優しい言葉をかけ、手を差し伸べるということは、裏を返せば、相手は簡単に傷ついてしまう「弱い」人間であると、対等ではなく接していることになるのです。

私たちの偏った目が、相手との関係を偏ったものにしてしまう。相手を「困った人」「かわいそうな人」「傷つきやすい人」として見てしまう、私たちの見方そのものが、もしかすると問題かもしれないことに、もっと自覚的であるべきなのかもしれません。

相手も変わる可能性があること。立ち直る力があること。他者と向き合う力があること。そうした相手の力を心の底から信じることが、本当の意味でのアサーティブの対等性なのですね。

少し涙ぐんで話してくれた彼女に、ちょっぴりもらい泣きしながら、人間の持つ力について希望を感じたひと時でした。


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変えられるのは自分だけ

カテゴリー:汐生の思い

2015.07.17

アサーティブに自分の気持ちを伝えたいと思う時、肝に銘じておかなければならないことの一つに、「相手を変えることはできない、変えられるのは自分だけ」ということがあります。目線と言葉の矛先が「相手」に向いている限り、どんなに表現を磨いても、どんなに理論的に伝えても、やっぱり相手の心に届かないし、状況は変わっていかないのですよね。

ただ、自分の中の「何を」変えることが、自分も相手を責めないことにつながるのかを見極めるのは、結構難しいなと思います。自分の中の変えるポイントを見誤ってしまうと、やはりうまくいかなくなる。

私自身も思い当たることがあります。

仕事はともかくも、プライベートに関することは、何かを言われると結構凹みます。きつい言葉を投げつけられたとき、ついつい「〇〇は言わないでほしい」「△△はしないで」と感情的に反撃しそうになってしまう。心の中で呪文のように、「相手を変えるのではなく、変わるのは自分」と唱えながらも、自分の中の「何を」変えることがそうなのか、長い間、手探り状態でした。

感情的にならないようにしよう
反撃をしないように、ひと呼吸おこう
心を落ちつけて、対応しよう

怒りを抑えるための様々な対処法を試してみましたが、やっぱり相手の言葉に反応してしまう自分はなくなりません。自分の中の目線が相手に向いたまま相手がどう出るか待ち構えている状態では、やっぱりうまくいかないのです。

そうでなくて、相手がどうであれ、自分自身のありよう、心のもちよう、を変えること。自分自身に対する自分の"見方"を変えること。そのツボはどこだろうと、つらつら考えておりました。

ふと気づいて、ああ、そうだと思ったのは、
「過去の自分を責めることは、もうやめよう」
ということでした。

あれができなかった、こうすればよかった、あれをすべきでなかった...、過去の自分を許せていない限り、過去に対しての批判にはつい防衛心が働いて感情的に反応してしまうのですよね。

そうではなくて、できなかったことはできなかったのだ、過去の自分もかけがえのない自分。そんな私もOKだし、精一杯がんばったのは事実。
でも、「今」と「これから」は、自分で変えることができる。
だから、過去の自分を責めることは、もうやめにしよう。

そう決めた時から、きつい言葉に反応することがなくなりました。

相手に反撃したくなるのは、ほとんどの場合、自分を正当化したいから。自分を防衛したくなるからこそ。だからこそ、まずは自分を責めない。過去の自分も100%、「それで生きてきた自分もよし!」と許してあげられること。そうすれば、相手に振り回されないし、周りにも寛容になれるのでしょうね。

頭でわかっていても、ついつい入り込んでしまうこの迷路。
アサーティブ、修行、修行。
自分に言い聞かせているこの頃です。

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法人11年目から目指すこと

カテゴリー:事務局から

2015.05.27

先日の5月23日は、アサーティブジャパンの社員総会でした。昨年は"これまでの10年"を振り返る時間でしたが、今年は"これからの10年"を考える総会となりました。

NPO法人アサーティブジャパンは市民活動団体です。なので、定款の第3条にはこんなことが書かれています。

「本法人は...(中略)...市民のコミュニケーション能力の向上を通じて、対話を土台とした暴力のない社会、国籍、人種、性別などで差別されることのない社会(中略)の実現に貢献することを目的とする」。

これまで私たちは、アサーティブを広げ、アサーティブの伝え手を増やすことを第一の目的としてきました。どれくらいの人たちにアサーティブを伝えることができたかが、活動の目的の中心にあったと思います。事務局だけでも3年前から、年間1万人を超える人たち(昨年度は1万2千人)に、アサーティブのエッセンスをお伝えできるようになりました。

伝えた人数はOK。でも、私たちが本当に目指すものは何なのでしょうか。

アサーティブを伝え、"伝え手"を増やすことで、「社会の何を変えたいのか」を、本当にしっかりと考える時期に来ているように思います。アサーティブを知る人が増えることで、どんな変化が生まれるのか、社会のどんな問題が解決されるのか、あるいは解決する可能性が広がるのか。
そんな議論ができたことが、今回の総会でとても有意義な時間となりました。

例えば。

発達障害を持つ当事者の人たちの就労支援の現場で、職場で自分の状況を的確に伝えられる(「自分は〇〇ができないので待ってほしい」など)ようになることで、自信と誇りをもって仕事ができるようになる。その結果、当事者の人たちの就労が増え、離職が減った。

仕事の悩みを話したり、上司や部下との人間関係を見つめ直すためのサロンが会社内で開かれるようになり、職場で率直にモノが言える雰囲気ができてきた。

HIV陽性の当事者の人たちが、自己表現の権利に基づいて周りと対等な人間関係を築くことで、より前向きな人生を生きられるようになってきた。

小さな子どもを持つ母親たちが、夫や家族、地域の中でコミュニケーションを取るようになり、孤立しなくなることで、子どもへの虐待を減らすことができた、などなど。

相手を「敵」として見るのではなく、問題を共有し解決していく「協力者」として見ること、そして誠実・率直なコミュニケーションを重ねていくことで、相手との関係はより対等なものに変わっていくのですね。どんな状況であっても私たちは無力ではない、「変わる」ことは可能であるという希望。そんなプレゼントを、たくさんいただくことができました。

もう一つ、総会で確認したことは、「私たちは一人ではない」ということです。

以前山形の会員さんが虐待防止ワークショップを行った際、問題解決のためには、"知識"と"勇気"と、そして"仲間"が必要であると言っていました。そのことを今回も、仲間同士で感じる時間になったと思います。

「NPO法人アサーティブジャパン」の歴史は10年しかありませんが、アサーティブトレーナー養成の受講生は、15年以上も前からつき合ってきた大事な仲間たちです。その間に人生が大きく転換した人たちもいます。たとえ生活や職場は変わっても、アサーティブを学ぶ"仲間"であることは変わりません。「役割を離れた素の自分として、認め合える仲間」がいることは、私たちが厳しい現実に向き合う時に、どれほど心の支えとなっていることか。どこにいても「仲間がいて、話を聴いてくれ、支えてくれる」関係があることは、本当に、本当に心強いことなのだなと、私自身感無量になりました。

今年の総会は、一人ひとりが人間としての尊厳を失うことなく、お互い助け合って生きていける社会を目指すことを、改めてじっくり考える貴重な時間となりました。11年目も引き続き、軸がぶれないよう意識しながら歩いていきたいと思います。

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新入社員が必要な力:対人関係能力を

カテゴリー:事務局から

2015.04.08

年度末から新年度にかけて、国立の桜が今年も美しく咲きました。

今年はちょうど、国立の桜の時期が二人の子どもたちの卒園式に重なりました。私事ではありますが、我が家の双子が3月末に保育所を卒園し、4月から新しい保育園に通うことになりました。毎朝見送る二人の後ろ姿に"成長"を感じて、私もがんばらねば!と感じるこの頃です。

さて本題です。

新年度といえば、新入社員の方々の新入社員研修。今年はこれまでとは少し様相が変わっています。というのも、コミュニケーション力を重視し、「対人関係力」をつけてほしいというニーズが高まってきているように感じるからです。

これまでのビジネス上のコミュニケーションといえば、情報を正しく伝達するためのコミュニケーションのノウハウが主でした。報告書やレポートの書き方、ロジカルシンキング、プレゼンテーション術、傾聴法、及び報連相の方法などが、中心だったように思います。

ところが昨今、新人さんたちの対人関係力が弱くなり、「自分はできるはず」という間違った自己認識もあいまって、自分勝手に仕事を進めてしまう、大丈夫でないのに「大丈夫です」と言ってしまう、相談ができない、上司や先輩からのきつい一言に折れてしまう、などのことが顕著になってきました。人事担当者からは、情報伝達のIQ的なコミュニケーション能力だけではなく、人間の感情を取り扱えるEQ的なコミュニケーション能力の欠如に対する危機感があるように感じます。

今月は何件か新人研修を担当いたしますが、主に上司とのコミュニケーションの力をつけていただくことにしています。

具体的には
・早めに相談できる関係を作るスキル
・上の立場の人にも、時には「モノ申す」ことができるスキル
・関係を悪化させることなく「No」を伝えるスキル
・上司からの批判に落ち着いて対処できるスキル
などの力です。

ゆっくりと会社の文化に慣れながら、対人関係の力をつけていく時間も余裕もなくなってきた今の時代。だからこそ、対人関係のコミュニケーションを「スキル」として持っておくことが、新人さんにも必要になってきたのかもしれません。

がんばれ、新人さん。心からエールを送っています。

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ハラスメント防止のためのコミュニケーションを

カテゴリー:汐生の思い

2015.02.18

昨年の夏以降、私は「ハラスメント予防」という目的でのアサーティブ研修で走り回っておりました。これまでも、社内のコミュニケーションの改善を目的とした研修のご依頼は多くあったのですが、この1,2年はハラスメントの防止、メンタルヘルス予防という目的で、日常のコミュニケーションのあり方を変えていかなければと考える組織が多くなってきたように思います。

パワハラ・セクハラの定義や「何がダメか」は、社労士さんや弁護士さんのお話を聞いて理解した。しかし、パワハラという言葉が知られるようになればなるほど、別の悩みが出てきたというのです。

「パワハラだと思われたら困るので、厳しいことが言えない。はっきり言えずに遠回しになってしまう」
「部下の言動がパワハラに該当すると思うのだが、どう伝えれば本人に理解してもらえるだろうか」

ある企業のコンプライアンス担当は、ハラスメント防止のための社内ポスターを作成しました。
その文言は、
「ハラスメント、いじめには、見て見ぬ振りをせず、声かけを!」
「ひとりで悩まず、まず相談を!」
とあります。

「まず相談を!」という文言はわかりやすく、実際に相談窓口を設置し、相談ルートを明確にしているので、どう行動すればよくわかります。

ところが、「見て見ぬ振りをせず、声かけを!」とは、一体全体どんな"声かけ"をすればよいのでしょうか。いじめをしている人に「それはよくないよ」と声をかけることは、仕事をしている現場で、本当にできることなのでしょうか。

ハラスメントが原因で自殺者を出してしまったある組織は、パワハラが行われている状況を、20名以上の人が見ていたそうです。確かにハラスメントを起こす本人は問題であり、厳重な対処が必要となります。しかし、実際にそれを見ていた人たちが、「見て見ぬ振りをせず、声かけを」することが難しかったからこそ、問題を止められなかったとも言えるでしょう。

パワハラは職場の力関係を背景に行われます。相手の「上の力」に介入するのは、とてもとても難しい。下手をすれば今度は自分がターゲットになってしまうかも、どうせ言っても何も変わらない、あの人はそんな人だ、という無力感が、職場全体でコミュニケーションの意欲さえもなくしてしまう。だからこそ、介入のための"伝え方"には工夫が必要になるのです。

アサーティブでは、まずは「伝える側」の訓練から始めます。ハラスメントにならない、モノの言い方を、しっかり訓練します。
次に、ハラスメントに当たる言動をしている他者に、きちんと介入する訓練も行います。

時間があれば行いたいのは、「言われる側」の対処の仕方です。きつい言葉を言われたから、即、パワハラだ、というのではなく、相手の言葉の裏にあるメッセージを受け止め、問題解決の方向に向かって行ける力をつける訓練です。

人間関係が複雑になればなるほど、言葉が相手を傷つけるリスクも高くなっていきます。だからこそ、言葉と同時に心(マインド)でも、自分も相手も尊重できる土台を持ちながら、人間関係を築いていけるようになりたいですね。

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