
アサーティブジャパン代表の森田汐生が、講座での感想や、日々の生活の中で感じたアサーティブネスにまつわるエピソードをアップしていきます。
過去の記事はこちらからどうぞ。
カテゴリー:講座から
2010.07.22
先日、アサーティブネストレーナー養成講座で合宿研修を行いました。第3回目の合宿研修のテーマは、「自分に向き合う、社会に向き合う」。アサーティブネスの大きな柱である「対等性」を軸に、社会の中の「はしご」に位置づけられる自分を認識し、社会の中の課題に向き合うというテーマにじっくり取り組みました。
2日目には、私たちの団体の会員トレーナー3名の方に、ゲストスピーカーとしてトークをお願いしました。それぞれ、「はしご」というメタファーでは上だったり下だったりですが、それぞれアサーティブに生きることを実践されている素晴らしいお話でした。中でも印象的だったのは、誰ひとり「犠牲者」の立場で話をする人がいなかったことでした。
私たちはいとも簡単に「自分は犠牲者だ」と思いこみ、そのように振舞ってしまうことがあります。「あいつが悪い、自分は犠牲者だ」、「社会/会社/上司/家族が悪い、自分は犠牲者である」という視点。誰かや何かを悪者に仕立てて、自分は責任のない"犠牲者"。犠牲者である限り、周りを責め、社会を責め、仕組みを責め、自分を責め。誰かを責めていれば、本当の問題に向き合わなくて済むのです。
アン・ディクソンさんが来日した時のワークショップで、「性差別」を取り上げたことがありました。性差別の中では女性はえてして「犠牲者」の側になり、男性や仕組みを「加害者」に仕立て上げることになりがちです。しかしアンさんは、「自分が性差別に加担した事実を挙げてみる」ことを課題として出しました。性差別を自分自身が助長していたことに気づかない限り、本当に差別に向き合うことはできないということだったのです。
女性が性差別に加担することは、考えてみれば沢山あります。自分の息子に「男なんだから・・・」と声をかけてしまう、心の中で「どうせ女性なんだから責任をとらなくてもいい」と言い訳を考えてしまう、他の女性が差別されていることに気づかないふりをする、など。社会の差別に実は自分も何らかの形で加担している事実に気づくことが、「はしご」を相対化する第一歩なのだというお話でした。
自分の振る舞いが攻撃的であっても受身的であっても、心の中では「相手が悪い、自分は悪くない」という構図を持っていることはしばしばあります。心の中では誰かを「責めて」いるわけですね。アサーティブネスはその意味では、「自分も他人も責めることをやめる」という心のスタンスだと言っていいかもしれません。
3人のお話を聞きながら、私は涙が止まりませんでした。悩み、葛藤し、失敗し、勇気を持ってそれでも前を向いて、自分も他人も責めないで生きている。そんな人たちの姿は美しいなあとつくづく感じ、勇気をたくさんいただいた時間となりました。
カテゴリー:講座から
2010.06.21
ビジネスの現場で若手のコミュニケーションスキルアップにかかわっていると、彼らの現状のスキルと、求められているスキルのギャップの大きさに同情することがあります。
子どものころから手とり足とり大切に育てられてきたからなのでしょう、若い世代のコミュニケーションの課題の多くは、自分の主張ができないことにあります。どこかで自分の要望は相手が汲み取ってくれると思い込んでいる。「お腹がすいた」と言えば、そばにいる大人が、「リンゴがいいの?みかんがいいの?」と言葉を継いでくれて、「リンゴがいい」と答えるようなやり取り。上司に「仕事が進まないんです」と言えば、「どれくらい終わったの?」「いつ終わるの?」「誰に頼めそう?」「どうしたらいいと思う?」と、質問してもらって、それぞれの質問に一つひとつ答える、みたいな。
相手が自分の言いたいことを引き取って会話を繋いでくれるという、暗黙の期待とでもいうのでしょうか。
おそらく、十年ほど前まではそれでもよかったのかもしれません。上司に黙って従って、まずは仕事を覚える、つべこべ言わずにさっさとやる。そうした中で、時間をかけて若手も会社の中で「一人前」になるという、大人になるまでの時間の余裕がありました。日本には相手の心を汲み取る「以心伝心」の精神を大切にしてきた歴史がありますし、終身雇用制の仕組みとあいまって、長い時間をかけて会社の中で「人材育成」する風土があったわけです。
しかしながら、価値観の多様化、社会や組織の構造の変化に伴い、"ダイバシティー"社会に向かって、会社に入った段階から「一人前」の大人としてきちんと対等に主張できるようになることが求められるようになっています。ゆっくり人材育成する余裕はなくなり、フラットなチーム仕事が増えていく中、中途採用スタッフや専門的な派遣スタッフの中で、若手もチームの一員として早いうちから自己主張する必要が高くなっているのです。
その意味では、のんびりと子ども時代を過ごしたゆとり世代の若者が、ビジネスに入って即一人前のコミュニケーターとなることを期待されるというのは、これからの若手にとってシビアな時代になってきたなあと痛感します。
若手人口が少なくなっていくに従って、若手が早く「一人前」になるプレッシャーは高くなっていくでしょう。若手が自分の意見を考え、そしてしっかりと相手に伝える能力を、周りの大人が丁寧に指導していく必要は、今後ますます高まっていくに違いありません。
カテゴリー:講座から
2010.04.17
4月は新入社員研修の時期です。寒い4月のある日、新入社員さんたちの研修を丸一日担当させていただきました。
グローバルな視点を持って仕事をするためには、アサーティブネスの考え方とスキルが欠かせません。とりわけ、文化も価値観も違う相手とコミュニケーションをとる時には、自分も相手も尊重したアサーティブな心構えや態度が絶対に必要となります。
「違う」ことを土台としたユーロピアンコミュニティ(EC)やアメリカ社会とは違い、日本では「同じ」という土台からどうしても思考が始まってしまいます。そのため、「言わなくてもわかる」「雰囲気から察する」というアプローチになりがちです。少し前に流行った「KY」という言葉も、そうした土壌があるからこそ生まれたのかもしれません。
「違う」ことを土台とした社会では、「KY」などそもそも存在しません。空気など読めないし、読む必要もない。違うのであればはっきりと言葉で主張し、違いを明確にして問題を解決していかなければならないのです。そこに必要なのは、明快で、簡潔で、対等な主張のスタイル。アサーティブネスは、まさにそれなのです。
外国人の講師の方がアサーティブネスの必要性について、こう話しておられました。
直接的(Direct)であることは、攻撃的・無礼(Aggressive, Rude)なこととは違う。直接的でありアサーティブであることは、明確で簡潔で、そして相手を尊重した丁寧な表現のことである。アメリカ社会では、こちらがアサーティブに振舞うことで相手の敬意を勝ち得る。自分に尊厳を持ち自信を持ち、同時に相手を対等に尊重している態度は、ビジネス社会では基本の姿勢である、と。
異文化間では、言語や文化が違うからこそ、シンプルで明快で具体的な伝え方や、自分に誇りを持った堂々とした態度が必要となります。それは同時に、違う相手の言葉に真摯に耳を傾け理解しようとする姿勢でもあります。アサーティブネスをグローバルレベルに広げてみると、本当の意味での多様性に対する寛容さと対等性が見えてきます。
そんな話を新入社員の方とわいわいしながら、そして彼ら・彼女らが今後進んでいく道や夢の話を聞きながら、10年後、20年後、30年後の社会がますますよいものになりますようにと祈るような気持ちになりました。
ちなみに彼らは今朝(東京で雪が降った朝!)、富士山にゴミ拾いをしに行きました。寒い中、熱いハートをもって。がんばれ、新入社員!
カテゴリー:講座から
2009.11.24
アン・ディクソンさんを迎えての一連のイベントが昨日で一息つきました。14日の大阪講演に始まり、昨日の東京での2日ワークショップまで、ほぼ連日にわたる講演会やワークショップを開催してきました。特に21日の幕張での、勝間和代&アン・ディクソンジョイント講演会「社会変革とアサーティブネス」には、500名近くの参加の方をいただきました。
事務局は、20人近くのトレーナー会員スタッフとともに、午前中から嵐のようなスケジュールをこなしていきました。資料の作成、書籍販売の準備、同時通訳機器の調整、会場準備などを、ひたすら走り回っていた気がします。私は、勝間さんの取材にいらしたNHKの取材班の方との打ち合わせ、通訳者と講師、コーディネーターとの打ち合わせなどで、開会1時間前には緊張がピークに(汗)。参加者の方が続々集まってくる中、ワクワクと緊張と興奮と不安感で、久しぶりに軽いパニック状態でありました。
お二人のお話はとても興味深いものでした。それぞれ50分という時間の制約の中、アンさんはアサーティブネスの歴史と奥深さ、そして彼女のコアの思想である「対等性」についてお話いただきました。"タテの力関係"が主であるこの社会の中で、同時に対等な人間としてお互いを見る"個人の内側の力"を持つことの重要性についての、静かで力強いお話でした。
勝間さんはアンさんとは対照的に、非常にパワフルにスピード感をもって、アサーティブネスの持つ「主体性」と「自己決定・自己責任」の部分を、ご自身の社会変革の実践とともにお話いただきました。『断る力』を持って社会の不正に対して力強く「ノー」と言っていこうというメッセージには、とても大きな勇気をいただきました。
とても対照的なお二人でしたが、コアの部分、つまり私たち一人ひとりが、自分を信じ、主体性を持ち、自分の行動に責任を持ちながら、他者と対等にかかわり、しっかりと発言しつつ社会にかかわるという視点については、共通していたのではないかと思います。
会場の方からたくさんのご質問もいただきました。後半のパネルディスカションの時間が短くなりご紹介できたのは4,5件ほどでしたが、会場の方々からお二人へ鋭いご質問を本当にたくさんいただきました。思っていた以上に私たちのメッセージをご理解いただいて反応してくださったことが、とてもとても嬉しかったです。
私たちアサーティブジャパンにとっても、今回は初めての大きな講演会でした。スタッフと会員が一致団結して協力し開催までこぎつけたこと、大勢の方に共鳴していただいたことで、講演会は大成功でした。アサーティブネスのスキル以前に、私たち自身の主体性や対等なまなざしを持つことの重要性を理解して欲しいという私たちのメッセージは、しっかりと発信できたのではないかと思います。
開催するに当たって心配していた、同時通訳機器の紛失・破損ですが(1機につき2.5万円)、無事すべてを回収することができて、事務局一同拍手とハグをして終わることができました。様々な形でサポートしてくださった皆さん、そして参加してくださった皆さん、本当にありがとうございました。
お知らせですが、勝間さんがこの講演会にいらした様子は、12月4日のNHK「生活ほっとモーニング」で放映される予定です。お時間がある方はぜひどうぞ。
アンさんのイベントは、今週末にある会員対象の「セクシュアリティ」研修で閉幕します。このスペシャルな時間を楽しみたいと思います。
カテゴリー:講座から
2009.09.15
先日、大変ユニークな講座を担当させていただきました。(財)アジア農業協同組合振興機関(IDACA)の主催する、農村女性起業活動支援研修の一環としての「エンパワメントのための参加型手法」で、「アサーティブトレーニング」を担当させていただきました。
今回は昨年度に続き3回目です。今回も農村の起業を支援するアジアの女性リーダーたちが、一ヶ月にわたる研修に参加しています。今年の参加国は、ベトナム、インド、中国、ミャンマー、カンボジア、ネパールの女性たちです。
もともとアジアの女性たちにはSisterhood("姉妹の情"といっていいでしょうか、女性同士がとても仲良し)があるということは、フィリピン滞在中にもとても強く感じたことでした。参加者の女性たちは20代から50代まで、年代も国も経験も様々ではありましたが、ちょっとしたゲームに笑い転げ、ロールプレイを真剣に応援し、文字通り手を取り合って一緒に学んでいるという様子を見て私もとても心が温かくなりました。
アジアという文化圏もあってか、アサーティブに主張するときに全員が苦手としたのは、「ノーと伝えること」。その理由も、「相手が傷つく」「相手ががっかりする」「相手が気分を害する」という、相手の気持ちを慮ってのことで、そのために「ノーなんて言ってはいけない」と思っている人がほとんどでした。
ですからロールプレイでは、笑いながら汗をかきながらも、とにかく「ノー」をしっかり言い切る練習をくり返しました。そして次第に、自信を持った態度で相手の顔を見ながら堂々と伝えることができるようになり、最後はとても素敵な笑顔を見せてくれました。
実はその日はちょうど、私の誕生日でもありました(!)。それを知った彼女たちは、最後に感謝の気持ちもこめて、それぞれのお国の素敵なプレゼントをしてくれました。日本ではすでに誕生日を祝うことも、プレゼントをいただくこともほとんどなくなってしまっていた私ですが、今年は思いがけずとてもアジア的なプレゼントをたくさんいただき、忘れられない一日となりました。
まっすぐに、そして自分の国をよりよくしていくために一生懸命努力をしている参加者の方、そしてそれを支える担当者の方々に、深く頭を下げた一日でした。
とてもさわやかな時間をありがとうございました。
![]()