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AJ代表日記

アサーティブジャパン代表の森田汐生が、講座での感想や、日々の生活の中で感じたアサーティブネスにまつわるエピソードをアップしていきます。
過去の記事はこちらからどうぞ。

信頼の架け橋は自分からかける

カテゴリー:講座から

2015.09.03

先日のアドバンス講座の時に、大変印象的なお話を聞きました。1年くらい私たちの主催講座に参加し続けている方です。印象的であったというのは、半年前の彼と今回の彼が、劇的というほど変化していたからでした。

半年前、彼がアサーティブに伝えたい相手として出した課題は、「上司」でした。全ての課題が、上司とのやりとりに限定されていました。

「上司は、敵、なんです」

最初に課題について出してもらった時に、彼は鼻息荒くそう言いました。上司には言い負かされたくない、こっちの意見を飲んでもらいたい、だからいつも上司の言葉をカキーンと打ち返してしまう。でも、いつもいつも反撃してしまう自分をコントロールして、上司との関係を何とか改善したい、だからアドバンス講座まで来たのだと。

アドバンス講座では、アサーティブのスキルの部分ではなく、マインドに重点を置いてお話しています。相手を「敵」として見ないこと。相手を本当の意味で大切に思う気持ちがない限り、どんなに冷静に話をしたとしても、"アサーティブに"伝えてみたとしても、それは攻撃的であることに変わりないということについて、講座の中でたくさん議論します。

それでも彼は心の中で、「上司は敵だ」という思いをぬぐうことができないまま、半年前の講座は終わったように思います。

その後、彼はもう一度基礎講座から受け直し、自分の課題に取り組み続けました。そして先月講座に来たときは、なんだかとても穏やかになっていて、人が変わったようでした。

「どうされたんですか、ずいぶん変わりましたよね」
と話しかけると、彼は
「そうなんですよ、例の上司との関係が激変しまして」

今年度に入った6月頃のこと、これまで腹を立ててばかりいた上司を見ていた時に、ふと、「この人も大変なんだよな」と思ったそうなのです。そうしたらその場で、自然に言葉が出てきました。「Aさんも、これまで大変だったんですね」。すると上司は、「そうだよ、わかってくれるか」と答えたというのです。

それ以降、その上司とはいがみ合うことが全くなくなりました。

上司も大変な思いをしていたんだ、この人もこの人なりに苦労したんだ、と彼自身が思えるようになったことで、上司に対する敵対心が消えてなくなったそうなのです。それ以降、二人はいがみ合うことなく、穏やかに仕事をするようになりました。

小さな問題であれば、伝え方のスキルを変えることで問題を解決することは可能です。職場でも家族とのやりとりの中でも、自分の言い方を変えることで相手への伝わり方が変わり、その結果問題が解決できることは、様々な場面で見られます。

しかしながら、長年にわたる複雑な人間関係、例えば、怒りや悲しみが澱のようにたまっている家族や職場の人間関係においては、言い方を変えるという小手先のやり方では全く歯が立ちません。どんなに言い方を変えても、言葉尻に気をつけても、その人との信頼関係を本当に築こうと思ってアプローチしない限り、こちらの思いを理解してもらうことは不可能なのです。

前述の彼の場合、上司が苦労していることを心から理解し、相手の立場に寄り添ったことが、信頼関係の架け橋を自分からかけることになったのでしょう。その結果、相手は心のガードをおろし、立場でのいがみ合いではなく、対等な人間同士として向き合うことができたのかもしれません。

信頼という土台があってこそ、対等な対話が可能になる。そして信頼の土台を築くための架け橋は、自分自身からかけるということ。

それを彼の話から実感したのでした。

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「自分への尊厳」と「相手への敬意」

カテゴリー:講座から

2015.08.20

「ノー」を相手に伝えようとする時、反論されることを恐れるあまり、私たちは「ノー」の結論だけを伝えて、相手の説得にかかろうとします。「私の気持ちはノーです!」とはっきりきっぱり伝えて会話を終わりにし、その場を立ち去ろうとするのです。

それは、本当にアサーティブなのでしょうか。

はっきり「ノー」を伝えることは、アサーティブな振る舞いの基本ではありますが、一歩間違えば、自己満足の、とても自己チューの「ノー」になる危険性があります。

自己満足の「ノー」にならないために、気をつけなければならない大切なことは二つ。

一つは、「ノー」は相手という"人"に対して言うのではなく、お互いのためを思ってこそ伝えること。

もう一つは、「ノー」を伝えるプロセスで、相手への敬意を絶対に忘れない、ということです。

ひとつ例をご紹介しましょう。

高齢者の施設でケアマネージャーとして仕事をしてきたA君。大学を卒業後7年の間、その施設で仕事をし、今は職場のリーダー的な役割を持っています。施設長からも信頼され、スタッフ指導からシフトの調整まで、たくさんの業務をこなしていました。

最近A君は夜間の専門学校で、教員の資格を取るために学び始め、人を育成する仕事にとても興味を持つようになりました。可能であれば福祉の人材の育成をしていきたい。ゆくゆくは、福祉現場に良い人材を送り込めるようになりたい。それがA君の夢になりました。

A君は、施設長に自分はキャリアチェンジをしたいので仕事を辞めたいと告げました。
「自分は新しい仕事をしたいんです。自分の後任も育てますし、自分は研修の講師となって、今の施設のサポートもしますので。だから辞めることにします」

A君の意思が固いことを、施設長は理解するでしょう。しかし「自分は辞めることにします」という主張は、かなり一方的な印象はないでしょうか。ここでA君が伝えているのは、自分の事情、自分の利益、自分の都合であって、相手への思いやりやお互いのためという視点がすっぽりと抜けていることに気づきませんか。

自信をもって「ノー」をはっきりと伝えることは、アサーティブの大事な一歩であることには変わりません。しかし、それだけでは必要条件であっても十分条件にはならないのです。もう一つの視点、つまり本当にお互いを大切に扱うという視点抜きの「ノー」は、わがまま以外のなにものでもないでしょう。

アサーティブな「ノー」は、"自分への尊厳"と同時に、"相手への敬意"の両方を持って初めて成り立つ。自分と相手の双方を本当に大切にしてこそ、対等な「ノー」になる、ということです。
 
それでは、どのような言葉を伝えることで、相手への思いやりを含んだ「ノー」になるのでしょうか。

例えば、こんな言葉です。
 ・自分はこの施設で本当にたくさんのことを学ばせてもらった
 ・これまでの業務経験があるからこそ、今の自分がある
 ・それについては感謝の気持ちでいっぱいである
 ・今の自分を土台に、次のステップに進もうと思うようになった
 ・自分を一から育ててくれた施設長や先輩職員には、心から感謝している
 ・それを考えるととても胸が痛くなる
 ・自分は福祉の人を育てるという別の道を選ぶことで、この分野に貢献したい
 ・これまで本当にお世話になりました。これからも引き続きよろしくおねがいします

以上のような言葉が十分条件であり、相手への敬意となると思うのです。

相手は尊厳を持った一人の人間であるとして、心の底から尊重し、相手の存在に敬意を表することを忘れないこと。自分のノーの強い意思と、相手への思いやりの両方のバランスを取ってこそ、私たちのノーが温かい血の通ったメッセージとなって相手に届くのではないでしょうか。

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相手の力を信じること

カテゴリー:講座から

2015.07.31

研修の中で出てくる個人のストーリーには、どんなアサーティブの理論よりも「対等性」に関する真実が含まれていることがあります。

アサーティブの土台にある対等性とは、別の言葉で言えば、自分と相手の人間の尊厳を心から信じて相手と関わること、になります。

先日もある研修中、「今も忘れられないほめ言葉」というテーマで、ある参加者の女性が話をしてくれました。

それは、彼女が9歳の時のこと。

それまで彼女は、自分に自信がなくて自己主張ができず、友だちにもあまり話しかけることができなかったそうです。気の強い友だちにいじわるをされたり、悪口を言われたりで、いつも泣いてばかりでした。周りの先生や家族からは、「大丈夫、大丈夫」と慰められ、「いいからね、無視しておけば。かわいそうに」と、守られていたのだそうです。

ところが、3年生の担任の先生は違いました。

彼女に対して、「いじわるする人には、ちゃんと自分で意見を言わなくちゃダメよ」と、厳しく接しました。最初のうち、彼女はその先生のことが大嫌いでした。

でもある日、その先生の言葉に従って、いじわるした友だちに、自分の気持ちをはっきりと伝えました。「それを知った先生は、本当に、本当に喜んでくれて。教室でもみんなの前でほめてくれたし、母にまで電話をして、私のことをほめてくれたんです」。

それ以降、彼女は変わりました。自分に自信をもって主張してもよい、自分はOKなのだと思えるようになり、何かあった時は本人とちゃんと向き合って話すことができるようになったそうです。

大丈夫、大丈夫、と慰めてあげることは、必ずしも優しさではなく、むしろ相手を無力にしている可能性がある。そうではなく、例え厳しい言葉であったとしても、相手の持つ力を信じて、まっすぐに対等に関わることの方が、本当の優しさになるということを再認識したストーリーでした。

アサーティブの「対等」には、相手を対等な人間として見ること、尊厳ある人間として関わること、という意味があります。にもかかわらず、何かにつまずいて「できない」と苦しんでいる相手に対して、私たちは「優しさ」や「思いやり」という善意でもって、結果として相手を無力な人間に仕立て上げていることがあるように思います。相手を傷つけないように優しい言葉をかけ、手を差し伸べるということは、裏を返せば、相手は簡単に傷ついてしまう「弱い」人間であると、対等ではなく接していることになるのです。

私たちの偏った目が、相手との関係を偏ったものにしてしまう。相手を「困った人」「かわいそうな人」「傷つきやすい人」として見てしまう、私たちの見方そのものが、もしかすると問題かもしれないことに、もっと自覚的であるべきなのかもしれません。

相手も変わる可能性があること。立ち直る力があること。他者と向き合う力があること。そうした相手の力を心の底から信じることが、本当の意味でのアサーティブの対等性なのですね。

少し涙ぐんで話してくれた彼女に、ちょっぴりもらい泣きしながら、人間の持つ力について希望を感じたひと時でした。


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要望は一つ、肯定から始める

カテゴリー:講座から

2014.05.07

アサーティブであるということは、相手に受け取ってもらえる肯定的なメッセージだけを伝えることではありません。相手には受け取りづらいネガティブなメッセージや否定的な感情でも、相手を人として尊重しながら、「建設的に」伝えらえることです。

とはいえ、この「建設的に」というのは、アサーティブなスキルの中でも最もハードルの高いものです。とりわけ昨今は、ハラスメントになってはいけないというプレッシャーのために、管理職の人たちは、むしろ遠回しになったり言わないまま飲み込んでしまったりで悩んでいるようです。

しかしながら、言うべきことははっきりと相手に伝えなければなりません。あいまいで遠回しな言い方は、こちらの意図が相手に伝わらず、むしろ不愉快な気持ちにさせたり誤解を生んだりするからです。

耳の痛いことを伝える時の原則は、二つです。

肯定から初めて、肯定で終わること。
否定的な要望(相手に変わってほしいこと、これはダメだということ)は、具体的にして、「一つだけ」伝えること、です。

この、「肯定から始める」ということと、「要望は一つだけにする」というのが、実は一番難しい。感情的になると、どうしても「そもそもあなたは...」という決めつけや「いつも〇〇だ」と否定から始めたくなりますし、一旦口を開くと、あれやこれやを言いたくなってしまうからです。

肯定から始めるということは、決して「最初に持ち上げてから落とす」ことではありません。私たちがそもそも何のために仕事をしているのか、なぜ一つ屋根の下でともに暮らしているのか、お互いの信頼関係を築き、協力して進みたいからこそ、何かを変えていくことが必要になるのですよね。

だからこそ、「あなたのことは、いつも本当に感謝しています」というポジティブなメッセージから始めてみるのです。そうすれば、「相手をやっつけてやりたい」「相手に非を認めさせたい」という心の中のこぶしがふっとゆるんで、攻撃や非難ではない形で会話を始めることができるでしょう。

まずは相手を認める。
相手の人となりを心から尊重する。
そして、自分自身の気持ちや要望を明確にして、自信を持って言葉にする。

これを忘れて話し始めると、メッセージは相手の胸に届きません。相手のことを本当に理解しようとする気持ちがあってこそ、こちらのことも理解してもらうことができるのだということを、どんな時でも忘れないでいたいものです。

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相談できる人を持つ

カテゴリー:講座から

2014.04.07

ありのままの自分を受け入れること。
失敗をしても、拒絶にあっても、そんな自分を受け入れて大切にしたいと思えること。
つらいときに無理に我慢するのではなく、誰かに相談して助けを求められること。
疲れたら休みをとり、強くなれない自分でも許してあげられること。

自己信頼があるとは、そんなことかもしれません。難しい人間関係にアサーティブに対処するためには、長期的に自己信頼を築いていくことが必要になります。中でも、一人で抱え込むことなく、困った時に相談できる人を持っていることは、とても大事です。

これは私が以前、仕事に疲れ果てて燃え尽きたときのことです。

厳しい上司に毎日のようにひどく叱られ、いつまでたっても仕事が終わらず、睡眠時間を削る日々が何年も続いていました。だんだん体がしんどくなり、自分でも何を感じているのかわからなくなり、心のマヒ状態となっていました。ある日、とうとう職場で涙が止まらなくなり、「ああ、自分は壊れてしまうのか」と思ったときがありました。

ある日私は決心して、上司に3ヶ月の休職を願い出ました。
「どうがんばっても今は仕事を続けることができません。お休みをください」と。

上司は理解し、私は3ヶ月のお休みをいただきました。3ヶ月たって職場復帰し、仕事のステップアップをして、その後はすっかり元気になりました。

さて、その間、私のつらい気持ちに耳を傾け、相談に乗ってくれたのは、ある友人でした。私が落ち込んで泣いてばかりいたときにも、「そうか、つらかったんだね。でも、あなたは大丈夫よ、どうであっても私たちはあなたを好きだからね」と言い続けてくれました。

仕事の自分がボロボロになっていても、ありのままの自分を本当に好きでいてくれる友人たちに、私は救われたのです。

・一人で抱え込まないこと。
・しんどくなったら早めに相談すること。
・そして、相談できる人間関係を日ごろから作っておくこと。
そうしたことを心がけていれば、思いもかけないことで足をすくわれても、大変な失敗をしてどん底に落ち込んでも、必ずはい上がることができることを知りました。

アサーティブであることは、スーパーマン/スーパーウーマンになることでも、落ち込んだ時に平気を装うことでもありません。ありのままの自分を認め、弱さも至らなさもすべてひっくるめた自分自身にOKを出し、自分の悩みや葛藤から逃げることなく向き合う力をつけることが、私たちの「人間としての強さ・奥深さ・他者への寛容性」をつくってくれるのではないでしょうか。

自己信頼を高め自分を大切にできるようになれば、相手を対等なひとりの人間として尊重することができます。自分の権利を尊重することができれば、他人の権利が侵害されたときに気づくことができます。そして、攻撃的になることも卑屈になることもなく、おかしいことにはおかしいと、誰をも責めることなく、誠実に、対等な立場から主張することもできるようになるでしょう。

人間関係はすぐには変わりません。長い目で自分を大切にすること、相手を大切にすることにあきらめず向き合っていくことが、自己信頼に基づいたアサーティブな人間関係を生み出していくことになるのです。

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