2023/5/22 みんなからのQ&A

まわりがみな余裕がなく対話が成り立たない(みんなのQ&A)

みなさんからいただいたご質問にお答えする「みんなのQ&A」のコーナーです。アサーティブについて質問したい、コミュニケーションについてきいてみたい、みなさんのためのQ&Aです。
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Q:まわりがみな余裕がなく対話が成り立たない
 
私は今から十年ほど前にアサーティブジャパンの講座を受講した者です。その節は大変お世話になりました。
 
AJのwebサイト『バリアの中での「建設的な対話」をあきらめない』を読み、感じたことがあってメールいたしました。
記事の中で強く印象に残ったのは、
「自分の権利を押しとおすことでもなく、なんでもすぐに解決できるわけでもなく、正解もない。だからこそ「建設的な対話」をあきらめずに積み重ねていく」
という一文です。まさにこのことを、私はアサーティブの基礎講座と応用講座で学んだのだ、ということを思い出しました。
 
最近は(特にコロナ禍以降)、価値観の多様化やIT化・競争化が進み、職場での余裕・ゆとり・溜めがなくなり、対話すら難しくなっていることを痛感します。
 
とりわけ『タテ社会』で動いている組織の中では、「指示」はあっても「対話」が成り立たない状況です。
「指示」を出す側にも、個人的・組織的に余裕・ゆとり・溜めがなくなっているのがマスクで口元を覆った目からもわかり、どのように言葉をかければ良いか困っています。
 
「他人と過去は変えられない」ということは頭ではわかってはいるものの、自分の中で堂々巡りの状況です。
 「このようにすれば大丈夫だ」という魔法があるわけではないことを十分に承知の上で、何か良い方法があれば教えていただけますでしょうか。
 
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A:解決したい問題点をあきらかにすることから
 
このたびはご質問をいただきありがとうございました。
ずいぶん前にご受講いただいたのですね!
長い間アサーティブを大切に思っていただいたこと、大変うれしく思っております。
 
>職場での余裕・ゆとり・溜めがなくなり、対話すら難しくなっています。
>「指示」はよくあるのですが、「対話」は成り立たない状況です。
 
そうですよね。
メールを拝読して、本当に過酷な現場にいらっしゃることが伝わってきました。
人員不足や経営の悪化、IT化の弊害や組織自体の問題など、ひょっとしたらコミュニケーションを変えるだけでは解決が難しい問題なのかもしれません。
 
しかし「現場に余裕がない」「指示はあっても対話が難しい」という事実をしっかり把握しておられるのは、解決にむかう一歩をすでに踏み出しておられるのかな、と思いました。
 
まずは今起きている事実が、どんな問題につながっているかを明確にすることからはじめてはどうでしょう。
たとえば、
・コミュニケーション不足から現場でミスが起こっている
・メールによる指示があいまいで若手スタッフが誤解してしまい、お客様に間違った対応をしてしまった
など、「このままでは大きな問題につながってしまう」という危機感も含めて一度自分の中で言葉にしてみます。
 
具体的な問題点と懸念が明らかになれば、その問題を解決するために、「誰に対して」「どんな相談や提案をしてみようか」を考えることができます。
このプロセスが、「建設的な対話」をするための大切な準備になります。
 
「他人と過去は変えられない」からこそ、自分が今できる小さなアクション(誰に/何を伝えるか)を具体的に考えてみましょう。
 
組織内の大きな問題をすぐに解決するはむずかしいことだし、大変な状況下で自分にできることは、ほんのささいなことかもしれません。
しかし、解決を急がずに、長い目で見て小さな変化を起こしていくこと(それはたとえば上司や同僚に相談をしてみたり、メンバー間で小さなミーティングをやってみることかもしれません)、そういう積み重ねがまさに「建設的な対話をあきらめない」ことにつながっていくのだと思います。
 
質問者さんがおっしゃる通り、魔法のような回答にはなりませんでしたが、何かのヒントになれば幸いです。