2010/11/8 汐生の思い

自分は何を変える覚悟があるのか

「アサーティブに要求を伝える」ことの落とし穴は、「こっちがアサーティブに伝えたんだから、相手は自分の言うことを理解して今後は100%変わるべきだ」と考えてしまうことです。

人間は忘れる生き物です。その場では言われたことを覚えていても、一発で行動が変わって別人になることはまずありません。

アサーティブネスとは、目の前にある問題を解決するために相手と向き合って、一つひとつ話し合っていく力のことです。ホワイトボードに問題が描いてあり、相手と一緒にどうしたら問題解決ができるだろうとボードを見ながら話し合っているような構図を思い浮かべるとよいかもしれません。つまり、自分も相手も問題に対して「共同責任がある」ところからスタートするのです。

こんな話がありました。あるIT企業で仕事をしているAさん、同僚のBさんが仕事の締め切りを守らないことにイライラしています。締め切り日になって「できてる?」と聞くと、「まだです」という返事。そういうことが何度か続き、ある日とうとうAさんは、「いい加減にしなさいよ!みんなに迷惑をかけているのがわからないの!?」と大声でBさんに怒鳴ってしまいました。Bさんはムッとした顔で黙り込んでしまいました。

これはいけない。翌日AさんはアサーティブにBさんに率直に謝り、「今後は必ず締め切りを守ってほしい」と伝えました。今度はアサーティブな態度で、事実を伝え、自分の感情を言葉にして具体的な要求を伝え、Bさんも納得した表情で「了解」と答えました。
ところが1月ほどたつと、再びBさんの仕事の遅れが目立つようになりました。
Aさんは、「ええっ!前言ったでしょ。なんで守らないの?」とイライラ、むかむか。

何が問題なのでしょうか。

アサーティブに伝えることで見逃されがちなのは、相手に対する要求を明確に出すと同時に、「問題解決のために自分は何を変える覚悟があるのか」を考えて、「自分も変わる」ことを引き受けることです。相手に100%変わるよう要求だけ突きつけて自分は変わらない、要求のしっぱなし言いっぱなしの態度は、アサーティブな話し合いのルール違反なのです。

例えば、後輩に顧客対応についてのミスを指摘した後は、
「自分の対応にもまずい点があるかもしれない。その場合は率直に伝えてほしい」
と付け加えて、相手のフィードバックにオープンになる。
報告書の締め切りを守るように伝えた後は、
「私も締切日のその日になって確認するだけではなくて、しばらくは1週間前、3日前、前日、というように、ちょくちょく声をかけるようにするね。できてない場合は、その都度相談して軌道修正ができるように一緒に考えよう」
と、自分ができるフォローを考えて具体的に相手に伝えます。

これは、問題に対する共同責任を取るためのとても重要な姿勢であり、コミュニケーションを使って「一緒に」問題解決をしていくための重要な土台となりますので、ぜひ覚えておいてくださいね。

問題解決は共同責任で。常に一緒に考える姿勢を持っておきましょう。