2015/5/27 事務局から

法人11年目から目指すこと

先日の5月23日は、アサーティブジャパンの社員総会でした。昨年は"これまでの10年"を振り返る時間でしたが、今年は"これからの10年"を考える総会となりました。

NPO法人アサーティブジャパンは市民活動団体です。なので、定款の第3条にはこんなことが書かれています。

「本法人は...(中略)...市民のコミュニケーション能力の向上を通じて、対話を土台とした暴力のない社会、国籍、人種、性別などで差別されることのない社会(中略)の実現に貢献することを目的とする」。

これまで私たちは、アサーティブを広げ、アサーティブの伝え手を増やすことを第一の目的としてきました。どれくらいの人たちにアサーティブを伝えることができたかが、活動の目的の中心にあったと思います。事務局だけでも3年前から、年間1万人を超える人たち(昨年度は1万2千人)に、アサーティブのエッセンスをお伝えできるようになりました。

伝えた人数はOK。でも、私たちが本当に目指すものは何なのでしょうか。

アサーティブを伝え、"伝え手"を増やすことで、「社会の何を変えたいのか」を、本当にしっかりと考える時期に来ているように思います。アサーティブを知る人が増えることで、どんな変化が生まれるのか、社会のどんな問題が解決されるのか、あるいは解決する可能性が広がるのか。
そんな議論ができたことが、今回の総会でとても有意義な時間となりました。

例えば。

発達障害を持つ当事者の人たちの就労支援の現場で、職場で自分の状況を的確に伝えられる(「自分は〇〇ができないので待ってほしい」など)ようになることで、自信と誇りをもって仕事ができるようになる。その結果、当事者の人たちの就労が増え、離職が減った。

仕事の悩みを話したり、上司や部下との人間関係を見つめ直すためのサロンが会社内で開かれるようになり、職場で率直にモノが言える雰囲気ができてきた。

HIV陽性の当事者の人たちが、自己表現の権利に基づいて周りと対等な人間関係を築くことで、より前向きな人生を生きられるようになってきた。

小さな子どもを持つ母親たちが、夫や家族、地域の中でコミュニケーションを取るようになり、孤立しなくなることで、子どもへの虐待を減らすことができた、などなど。

相手を「敵」として見るのではなく、問題を共有し解決していく「協力者」として見ること、そして誠実・率直なコミュニケーションを重ねていくことで、相手との関係はより対等なものに変わっていくのですね。どんな状況であっても私たちは無力ではない、「変わる」ことは可能であるという希望。そんなプレゼントを、たくさんいただくことができました。

もう一つ、総会で確認したことは、「私たちは一人ではない」ということです。

以前山形の会員さんが虐待防止ワークショップを行った際、問題解決のためには、"知識"と"勇気"と、そして"仲間"が必要であると言っていました。そのことを今回も、仲間同士で感じる時間になったと思います。

「NPO法人アサーティブジャパン」の歴史は10年しかありませんが、アサーティブトレーナー養成の受講生は、15年以上も前からつき合ってきた大事な仲間たちです。その間に人生が大きく転換した人たちもいます。たとえ生活や職場は変わっても、アサーティブを学ぶ"仲間"であることは変わりません。「役割を離れた素の自分として、認め合える仲間」がいることは、私たちが厳しい現実に向き合う時に、どれほど心の支えとなっていることか。どこにいても「仲間がいて、話を聴いてくれ、支えてくれる」関係があることは、本当に、本当に心強いことなのだなと、私自身感無量になりました。

今年の総会は、一人ひとりが人間としての尊厳を失うことなく、お互い助け合って生きていける社会を目指すことを、改めてじっくり考える貴重な時間となりました。11年目も引き続き、軸がぶれないよう意識しながら歩いていきたいと思います。