#21
つたわるノート

「批判」と「自分」を分けて考える書き手:アサーティブジャパン トレーナー

「新型うつ」という言葉、ご存知でしょうか。
数年前にこの言葉がよくメディアで取り上げられ、多くの企業にとっても悩ましい問題のひとつとなっていました。

従来のうつ病は

・ストレスや長時間労働が原因で
・引きこもってしまったりやる気を喪失してしまい
・活動レベルが下がってしまう
・不眠や食欲減退

こんな一連の症状を示す病名です。
そしてそんな風になってしまった自分を責めるといった自責傾向が典型的とされています。
特に「真面目だったり、頑張り屋さん」な人に起きやすいと言われています。

これに対して「新型うつ」とは、
・仕事に対する活動性は下がってしまうが、それ以外のことはできる(たとえば、休職中に、海外旅行やライブにでかけるなど)
・過食や過眠
そして「そんな風になってしまったのは周囲の責任だ」と考える他罰傾向が特徴と言われています。

つまり仕事はできないけど自分の趣味などなら元気だし、仕事ができなくなってしまったのは職場のせい、上司や同僚のせいと考えてしまうというもの。
これって「わがまま」「甘え」と思われることもしばしば・・・専門家の間でさえ「病気」とするのか「性格的傾向」とするのか、議論の分かれるところです。

この「新型うつ」に関心を持っていろんなケースを見ているうちにわかってきたことは、なんでも周りのせいにする一見傲慢で自己中心的な態度は、実は「自己肯定感」の低さから来ているらしいということ。

症状が始まるきっかけの多くは「職場で叱られた」ということ。
叱った人にすれば仕事上の注意なのだが、本人には非常に理不尽なものと感じられて傷ついてしまい、脅威に思えるらしい。

もしかしたら自分にとんできた「批判」や「注意」を、丸ごと自分に貼りつけてしまっている状態なのかもしれません。
批判されている内容がほんとうに自分にあてはまるのか、あてはまらないのかを考えてみたり、「批判」や「注意」の中身について相手に具体的に尋ねてみたり、「不当だと思う批判」については自分の考えを相手に伝えてみたり。
そういったことができないがために、批判や注意の言葉に即座に傷つき、相手を憎んでしまうのではないでしょうか。

もしそうであれば、アサーティブコミュニケーションの中でも「批判への対処」というテーマは、この問題に貢献できるのではないかな、と考えたりしています。

たとえばそれは、批判と自分自身をはっきり分けて考え、相手の言葉を受けとめる力。そして自分の気持ちや考えを適切に伝える力。さらに自分への批判を問題解決や自分の成長につなげていける力。
それらの力が身につくことで、少々のことを言われたとしても、自分や相手を責める方向ではなく、自己信頼感(自己肯定感)が育っていく方向に進めるのではないかと思っています。