2010/12/27 講座から

適切な「ノー」の伝え方が適切な行動に結びつく

職場で隣の同僚(女子)の愚痴を聞き続けているA君。物静かで聞き上手だからか、チームの女性陣の愚痴の聞き役となっています。「あの人が〇〇でねえ」「それでA君、どう思う?」など、長い時には休憩時間を挟んで30分以上に及ぶことも。何度か話題を変えようとしたり、席を立ったり、あるいは忙しそうなそぶりを見せたりしていましたが、一向に愚痴は止まりません。

何とか「ノー」と言いたい、迷惑していることをわかってもらいたい、話を短く切り上げたいと思いつつもなかなか言い出せないまま数か月がたちました。そしてある日、思い余って上司に相談に行きました。深刻な表情のA君に上司が尋ねたところ、「席替えをしてください。僕はもう我慢ができません!」と。すでに隣の同僚とは顔を見るのも嫌になっていました。

このように、小さな「ノー」を伝えることができないために、いつしか事が大きくなって手に負えない状態になり、とうとう相手との関係を切ってしまった、ということはないでしょうか。

適切に「ノー」が言えないために、人間関係が悪化したり、体調を壊してしまったり、その人を嫌いになってしまったり、ビジネス関係が続かなくなってしまったり、ということがあってはまずいこと。だからこそ、アサーティブに「ノー」と言う方法を知っておくのは、日常生活でもビジネス上でも大変重要なことです。

とはいえ、アサーティブな「ノー」とは、必ずしも「できません」と実際に伝えることではありません。あくまで「ノーの言い方がわからないために言えない」という状態から自分が出て、自分が今、「ノー」と言うのか言わないのか、判断して適切な行動を選ぶことができること(自分で選択できること)をいいます。

それが、アサーティブな「ノー」を学ぶ目的です。

従って、「はい」と反射的に言ってしまう"くせ"がある人は、「いったん考えて」行動する新しい"くせ"を身につける必要があります。ますは一呼吸。そして、本当に「ノー」と伝えるべきだと判断したら、事が小さいうちに勇気をもって「ノー」を伝えてください。居丈高になることなく、卑屈になることもなく、堂々と明確に、相手を尊重しながら言葉にして伝えるのです。

「ノー」と言うことは、人間関係の終わりではなく、建設的な関係の「始まり」。自分で選択してさわやかに伝えられるようになるために、ぜひ日ごろから適切な「ノー」の伝え方を練習して身につけておいてくださいね。