2011/4/14 講座から

寛容になること

アサーティブトレーニングの講座の始まりには、いつも参加者のみんなで「News & Goods」(最近のニュースや嬉しかったこと)をシェアする時間をとります。大阪でのアドバンス講座は、2月末と3月末の2回講座でしたし、先週末のトレーナー養成講座も昨年の12月以来の再会だったこともあり、いずれの講座でも参加者の皆さんと「3.11以降のわたし」についてじっくり話す時間を取りました。

不安や怒りから涙もろくなった人、被災地で不安に押しつぶされそうになりながらも希望を忘れず地域で活動を続けている人。東京にいることに耐えられず、地方に疎開した友人もいれば、帰国を望む家族の声をスルーして、東京に残っている外国人の友人もいます。1カ月、ひたすら心にふたをしてきて、「やっと自分の気持ちに気づいて、昨晩初めて泣きました」とつぶやいた人もいらっしゃいました。

それぞれが、それぞれの「3.11以降」を生きている。

多分、日本全体が被災をしたと考えていいのでしょう。私たちが様々な形で「被災者」になり「当事者」になった。そして、それぞれのやり方で今、回復しようとしているのかもしれません。

とはいえ、震災から1カ月がたち、初期の「がんばろう、日本は一つ」という"空気"が少しずつ変わってきているのも事実です。「被災地とそれ以外」「フクシマとフクシマ以外」「東日本と西日本」「日本と日本以外」といった、地域ごとの対立項と同時に、価値観を含めた色々な対立項が際立つようになってきました。福島県から避難してきた人たちに対する心ない偏見の言葉、乗車拒否、宿泊拒否という「排除」の行動もあちこちで見られるようになってきています。

でも。それだからこそ。
震災から1月たった今からが、本当の意味での踏ん張りどころ。対立する価値観や様々な情報に飲み込まれて不安になる前に、少しだけお互いに「寛容になる」ことを意識してみてはどうでしょうか。身近な人とじっくり気持ちを聞きあうことで、自分の意識は変わってくるはず。

すぐ隣で笑っている友人も、職場で一緒に働いている同僚も、実は言葉にできない心の傷を抱えているということもあるのです。「つらいのは自分だけではない」ことに気づくだけで、自分のとげとげした気持ちがほんの少し柔らかくなって、人としての優しさと思いやりを取り戻せるのではないかと思います。

私たちは当事者。当事者として、自分の痛みも相手の痛みも真摯に耳を傾けてみる。痛みを抱えてそれぞれが生きているということに、真剣に思いをはせてみる。

回復には時間がかかります。だからこそ、寛容であることを忘れないで日々生きていきましょう。私もまだまだ手探りですが、一緒に歩いています。遠くの空から全身全霊を込めて心を送りながら、できることを一つひとつやりながら、精いっぱい、そして丁寧に毎日を生きることにします。