2010/9/14 谷澤久美子

集団心理が怖いけど、多分、見たほうがいい・・・「ザ・ウエーブ」

なんとなく秋の足音が聞こえてきましたね。
こんにちは!アサーティブジャパン認定講師、映画好きの谷澤久美子(くみ)です。

今回紹介する映画はアメリカで実際に起こった事件を、ドイツを舞台に映画にしたもの。昨年日本でも公開されて、今レンタルで見ることができる「ザ・ウエーブ」。洗脳をされていく人間の心理が恐ろしく、手で目を覆いながらすきまから怖々見るって感じでしたよ。

ナチスの独裁政治を再び繰り返さないために、今もなお様々なカリキュラムで学ぶドイツ。
ある高校の独裁政治を学ぶ(←こういう授業があることが驚き!)クラスの最初の授業の時間には、生徒たちは「ヒトラーが最低なんて散々きいてるし、そんなの当たり前。今の世の中に独裁政治なんてありえない」と口々に言うのです。それをきく担当の教師は、実験を思いつき、生徒たちを洗脳し始めるのです。

100914_kumi_the_wave.jpg
まず教師は自分の呼び方を変えさせます。今までは名前で呼ばれていましたが、名字に様を付けさせます。今までは自由に発言してOKだったのに、これ以降は挙手をして許可を求めてから、起立して発言をするように指導されます。クラスの中では互いに助け合うことを強要され、そして、制服(白いシャツにジーンズ)を着ることがルールに。

どこにでもいる普通の高校生たちが、たった5日間でみるみる間に集団の心理に巻き込まれ、誰も止められない、実験を始めた教師でさえコントロール不可能になっていく様子は身震いします。

しかし、クラスの中の女子生徒二人は、すぐにこの実験の恐ろしさに気がつき、ここから抜け出します。抜け出した者はクラスから排除されてしまうから、すごく勇気がいるけれど、二人はおかしいことをおかしいと言い、そして、正気を保つんです。それがこの映画の救い。

でもね、でももし、この中に自分がいたとしたら、この女子生徒たちのような行動がとれるかどうか、私は自信をもって断言することはできないと、正直思いました。情けないけど。

と同時に、この教師の妻の辛さを思うとやるせないんです。妻は、最初は「おもしろい実験ね」くらいの感じだったけど、だんだんエスカレートしていく夫を見ながら、それを止められないんです。それも怖い。自由でお互いを尊重し合っていた夫婦でさえそうなる怖さ。そして、歴史に学ぶと、第三帝国の役人だった人たちも、家庭ではいい父親だったんですよね。

これを見た方がいいと私が思うのは、「戦争は二度と起こしたくない、ファシズムはいやだとみんなが思っているから大丈夫」ではなく、人間はある条件が揃ってしまったとき、こういうことが絶対ないとは言い切れない、そういう存在なんだってことを、忘れないでいることが大切だと思うから。そして自分もその中の一人であるってことを、知っていた方がいいと思うからなんです。

おすすめ度100%!