2017/10/6 森田栄子

相手に「反省させたい!」と思ったときこそ、アサーティブに

こんにちは。アサーティブジャパン認定講師の森田栄子です。

 
アサーティブトレーニングを実際に体験された方はおわかりかと思いますが、アサーティブとは「伝え方」だけでなく、「人と向き合うときの心構え」を大事にしています。
そのなかでも、相手と「対等」に向き合うということは、本当に難しいものです。
特に相手と立場の違い・上下関係があるときや、思いがけない批判を受けたときなどは、人として対等に接すること自体が大きなチャレンジとなります。
 
そんなとき、よく思い出す出来事があります。
昔のことですが、祖父が亡くなった際、位牌に書かれた文字に間違いがあることに気が付いた時のことです。
亡くなった祖父を思うと「長年の檀家である寺の住職の手によって書かれたものなのに、ここを間違える!?」と怒りがこみ上げてきました。
 
頭に血が上った私は、「寺に文句を言って住職に謝罪と反省をしてもらわねば!」と思い、どうすれば一番効果的かを考えました。
 
そこで思いついたのが、我が家の相談役で、社会的信用がある大叔父から「大事な位牌の文字を間違えるとは、一体どういうことだ!」とガツンと苦情を入れてもらうことでした。
当時若かった私が伝えるよりも、大叔父から厳しく注意してもらったほうが、住職が深く反省するのではないかと思ったのです。
 
それを伝えると大叔父は私の期待に反して、穏やかに「では、お寺に失礼にならないようにお話しましょう」と言ったのです。
私はそれを聞いて、「失礼にならないようにってどういうこと?だって失礼なのはお坊さんのほうでしょう?」と納得できない思いでした。
 
とりあえず大叔父が住職に話をする場に同席させてもらったのですが、そのときの大叔父は上から威圧的にガツンと言うのでもなく、かといって下手に出たりご機嫌をとるのでもなく、住職の話を聞きながらも丁寧にこちらの気持ちや要望を伝えていました。
 
その姿を見て、私は感動してしまったのです。
 
『どんな人でも間違うことがある。だからこそ、相手の立場を思いやって、相手の話に耳を傾けながら自分の意見を伝えることが大切なんだ』
ということを目の当たりにした瞬間でした。
 
上から言うのでもなく、卑屈になるのでもない。相手と対等に向き合うということは、こういうことなんだと教えてくれたような気がします。
 
対等な心の姿勢は、言葉や行動に表れる。
だからこそ心の中で相手を責めたり、犯人探しをするのではなく、どんな相手に対しても敬意を捨てずに向き合っていくことで、関係を壊さずに問題を解決していくことができることを学びました。
 
ことあるごとに、あのときの大叔父の姿に「対等」であることの凛々しさと優しさが蘇り、新たな気持ちで相手と向き合う勇気となっています。