2009/11/12 谷澤久美子

これこそ、それなんだ!

こんにちは!アサーティブジャパン認定講師の谷澤久美子(くみ)です。

 みなさん、マイケル・ジャクソンのロンドン公演のリハーサルの様子を収録した映画「this is itthis_is_it_poster.jpgはご覧になりましたか?マイケル・ジャクソンというポップスの天才と、彼の理想を実現しようとするスタッフたちが、ひとつの公演にむけて、力を合わせていく様子が素晴らしいドキュメンタリー映画となっています。

 この映画の中でジャクソン5時代の歌のリハーサルに入ったとき、マイケルは首をかしげながら、歌いにくそうにします。そして一曲目が終わった後で、「こんなふうに直接自分の声を聴かないで歌うこと慣れていなくて、やりにくいんだ。このやり方が悪いと言っているのではない。ただ、私が慣れていないんだ。だんだん慣れていくようにする。私は怒っているんじゃない。これを言うのは愛からなんだ」とスタッフたちに語るシーンがあるんです。

私はこの「怒っているんじゃない。これを言うのは愛からんだ」という言葉を聴きながら、なんだか涙が止まらなくなってしまったのです。マイケルは、スタッフたちに嫌われたくなくて、しかし、この歌いづらさをなんとかしたくて、それでこういう言葉を使ったのかなと思いました。

スタッフは、とても冷静に彼の言葉を受け止めて「よくわかったよ。ミキサーのできることで問題解決をする方法は何かあるかな?たとえば。音を小さくするとか・・・」と提案します。すると彼は「それはいいね。少し小さくしてくれないか」と応えます。このやり取りをきいていて、大きな声でどなり合ったりしなくても問題を解決していくことは可能だし、話し合うことはアイディアや意見を交換していくものなんだと、私は対話の力を、またまた信じたのでした。

 一方で、マイケルの誰からも好かれたい、認められたいという欲求を感じたのは確かで、それはせつないものです。そしてそれは彼自身、子ども時代を子どもとして生きてこれなかったことが大きく関係していると思います。

 彼が2001年にオックスフォード大学で「大人は子どものことをもっと優先して考えよう」というメッセージをこめた講演を行った記録が、2002年に発行された写真集に掲載されています。その中にある子どもの普遍的な権利を書いておきたいと思います。

・愛される権利。自ら求めずとも。
・守られる権利。どんなことがあっても。
・かけがえのない存在だと感じられる権利。何も持たずにこの世に生を受けようとも。
・話を聞いてもらえる権利。大人にはおもしろくない話でも。
・寝る前に読み聞かせをしてもらえる権利。夕方のニュースや、『イースト・エンダー』(イギリスの家族ドラマ)に時間を取られることなく。
・教育を受ける権利。学校で銃弾におびえることなく。
・ かわいがられる対象となる権利 (たとえ平凡な外見だとしても)


002 写真集「マイケル・ジャクソン KING OF POP」より

 「This is it」は単なるリハーサル風景のドキュメンタリーを超えた、すばらしい人間のドラマでした。