2010/2/26 谷澤久美子

それぞれの事情に考え込む映画「正義のゆくえ」

こんにちは!アサーティブジャパン認定講師の谷澤久美子(くみ)です。

私の住む静岡市にはミニシアター系の映画館は一軒しかありません。多分、大都市では昨年秋ごろ上映されていたこの映画、やっと静岡にきてくれました。

seiginoyukue.JPG「正義のゆくえ」アメリカの移民の問題を取り扱った映画。不法就労の取り締まり、帰化、グリーンカード、偽装ビザにまつわるビジネスなど、移民問題に多角的な視点を与えてくれます。

 また、移民と一言では表しきれないほど、多種多様な事情をかかえていることに、本当に驚きます。

黒人の少女は里親が連れにきてくれるのを施設で待っています。彼女を度々訪れる移民弁護士の女性。メキシコ出身の女性は不法就労をし、捕まって自主退去のあとも、残してきた子どもを連れ帰るために危険を犯してでも越境を試みます。韓国から一家でやってきた家族は、父親がクリーニング店で働きながら、やっと帰化の日を迎えます。父親ほど市民権の獲得に誇りを持てない息子の姿があります。オーストラリア出身の白人で金髪の美しい女性は女優。観光ビザで入国し、ハリウッドをめざします。グリーンカードを取得したい弱みにつけ込まれて、判定官に二ヶ月の間からだを自由にされる条件をのんでしまうのです。多民族国家のアメリカ、もちろん当局側にも帰化した移民がいます。

 そんな中で、それはひどすぎると思ったのが、イスラム教徒の人々への偏見が感じられる強制捜査

 タズリマはベールで頭を覆う敬虔なイスラム教徒。3歳のときに両親とともにアメリカにやってきました。弟や妹たちはアメリカで生まれているので、市民権があります。彼女は授業で論文を発表しますが、それは9・11の犯人を人間としてみようという趣旨のもの。--確かに方法は間違っていたけれど、彼らにもそれをしなければならない理由があったはず。彼らの行為を認めることはできないけれど、彼らに主張したいことがあったことを知るべきだし、彼らはそういう手段を取らなければ、世界から耳を傾けてもらえなかったのかもー。クラスメートから大ブーイングの中、逃げるようにして帰宅。そしてその夜、移民捜査官と共にFBIがやってきて勾留されてしまうのです。危険因子と見なされてしまったのですね。

国境って何なんだろう。
多様な背景をもつ者同士が共生していくとき、人と人の間にあるものが「疑い」でいいのだろうか。
海外から日本を選んで移住してきた方達と、またこれから来日する方と、お互い文化や考えや価値観をどんなふうに伝え合っていけばいいのか。
日本でも起こっている、移住者の尊厳を損なうような出来事を、ニュースの中のことにしてはいけない!
そんないろいろな考えが頭をめぐります。

 重苦しい中で、希望がみえるのは、かつて帰化した移民が、明日市民権取得式に出席を予定している、まったく違う出身国の移民の窮地を救う場面であり、さらにそれを援護するのは、同胞だというシーン。ルールを国の正義と呼ぶのなら、見逃したり、目をつぶったりするのは、人のあり方としての「正」のように、私には思えました。
ぜひぜひ見てください。