①「相手の心にとびこむ。それが信頼関係につながる」

①「相手の心にとびこむ。それが信頼関係につながる」

職場を取り巻く環境や価値観、例えば年功序列や性別による待遇の差異など、旧来の日本の企業に多く見られた状況が大きく変化しています。保険会社に務めるKさん(30代女性)は、年上の部下を多く抱える管理職という立場。自分よりも社歴が長い、いわば先輩でもある部下とのコミュニケーションに悩んでいたと言います。

みんなの受講データ

  • 初回受講時期:2017年3月
  • これまで受講した講座
    1日ビジネススキルアップ講座、応用講座、ステップアップ講座

「年上の部下」とのコミュニケーションの齟齬

管理職という立場になり、人とのコミュニケーションが全てを司る部分になってくると感じていました。私自身も含め組織全体で年上の部下を持つ若いリーダー層が増え、コミュニケーションのつまづきでプロジェクトがうまくいかないことが目につくようになっていました。私の場合は、20歳以上年上の部下(男性が多い)を指導する立場にありました。


もともと、攻撃的ではないけれど思ったことは割とはっきりと伝えるタイプでしたが、仕事の際は、気を遣って感情的にならないよう気をつけて部下と接するようにしていました。しかしどうしても淡々としたコミュニケーションになり、相手との隔たりを感じていたんです。

アサーティブは、人と向き合う時の心の整え方

部下とのコミュニケーションの部分で、自分自身が壁を超え、その経験を会社の人材育成に生かしていきたいと思うようになりました。いくつかコミュニケーションスキルに関する研修を受けていく中で、「アサーティブ」という考えを知りました。たしか、「コミュニケーションはスキルでも技術でもなく、相手にまっすぐに向き合う心の姿勢のこと」と聞いたときに深く納得し、強く興味をもったんです。


それからウェブサイトでアサーティブのことを検索し、アサーティブジャパンのことや代表の森田さんの記事を読み、講座に参加しようと思いました。他社の講座が相手の態度を見て行動を変えていくものだったのに対し、AJの講座は、「人と向き合う時の自分の心の整え方」のトレーニングだというところに、一番興味を持ったんです。


また、AJは難しい言葉を使わず、シンプルに分かりやすく伝えてくれそうというイメージもありました。自分自身も今後、チームに物事を伝えていく立場にあるということを考えると、シンプルというのは大切な要素だったからです。

ロールプレイで、自分の「伝え方のクセ」に向き合う

初めての講座で印象深かったのは、やはりロールプレイの部分です。3人1組で、部下役の人と、普段の私(上司)役、というようにロールを変えながら行い、場所とシチュエーションも、この部屋で時間帯は何時くらいで、と細かく設定するんです。この場所にこういった机があると少し相手と距離があるよ、もっと近くに座らないと、という部分までこだわって。


ロールプレイのグループメンバーは、お互いに日頃関係性のない人たちです。だからこそ、自分のコミュニケーションのとり方について率直な意見をもらうことができました。自分の態度、言葉遣いや言い回しのクセ、そういったことを的確に指摘してもらい、私自身もすごく素直に受け入れることができたんです。「あぁ、そうだったのかぁ」とすとんと腑に落ちる感じでした。講座の会場の雰囲気も、トレーナーや他の参加者と適度な距離をとりつつ、意見を言いやすい感じだったのでよかったです。


ロールプレイのときに、トレーナーの森田さんから言われた「相手の心に飛び込んでいない」という言葉を今でも覚えています。最初は何のことか分からなかったのですが、私自身の、感情をあまり出さないようにしていた、よかれと思ってしていた態度の硬さのことでした。


「あなたが、言葉に気をつけていたり、礼儀正しくやんなきゃいけないと思っていることが、壁をつくってるよ」と森田さんに指摘されたんです。


確かに、何回も指導しても直らない部下がいると、「何か言ったってどうせできないんでしょ」という気持ちが自分の中にありました。
男性社会で、感情を出さないように、失礼のないように、と意識してきたことが、逆に年上の部下から見ると人間味が薄く、経営側から見ると私のやり方がチームというより他人事のように映っていたのかもしれません。自分が一生懸命やってきたことに対して、現実的に手応えが感じられず心が折れかけていたところがありました。


講座に参加して、コミュニケーションの決定権が実は受け手にあると知りました。そのためには、伝える側は表情、伝え方、声色、態度、これら全てを言葉に合わせていくことが大事なんですね。それに気づきました。


森田さんに率直に指摘されたり、他の参加者からフィードバックをいただいて、「あ、そこがダメなんだ」と素直に自分自身で受け入れられたことが一番の収穫でした。


より「人間らしい」コミュニケーションができるように

管理職という立場上、ヘビーでタフな部分も多くあります。講座に参加してからは、そういうときに衝動的な行動を取らず、自分をコントロールしていこうという意識が強くなりました。


例えば、自分がいい状態で会社に出勤できるように休みの過ごし方を変えたんです。いい状態で人と向き合うには、プライベートも含めて余裕がないと難しいですから。それまでは休日も出勤したりと働き詰めだったのですが、休みをとることも仕事のうちと思うようになったんです。


また、小さなことですが、昼休みの過ごし方も変わりました。それまではご飯だけぱっと食べてすぐ仕事に戻っていたけれど、30分くらいお茶をしたり、一人で過ごす時間の質を意識するようになりました。職場での自分のコミュニケーションを振り返って、あれを言えなかったな、これは午後ちょっと伝えてみようかな、といった整理をするようになりました。


コミュニケーションの変化という点では、「人間らしい部分」が出せるようになりました。今までは、冷静に淡々と、表面的な言葉を軸に話を進めていくことが多かったのですが、相手にとっては物足りなかったんだと思います。
年上の部下と飲みに行ったりする時はくだけた話し方をしていましたが、職場でもちょっとくだけた感じの方が、「しょうがないか、Kさんのためにやってやるか」という空気が生まれるようになったんです。


やっぱり年下で女性の上司に淡々と冷静に言われると、相手も構えちゃったり、できなかったらどうしようとか、緊張感を与えてしまうのかなあ、と自分の表情など外見も含めて反省しましたね。
緊張させてしまうと相手の良さを引き出すことができない、だから人間らしい部分をもっと見せようと。
それまでは、ちょっとした言葉の食い違いで、相手が感情的になることがあったのですが、今ではそれがなくなり、話が進みやすくなりました。

誰もが、良かれと思ってやっている

コミュニケーションに少し余裕が出てくると、相手を冷静に観察し、表面上の言葉や態度の奥にある、この人は何を伝えたいのかな、という部分を冷静に見なければと思うようになりました。
そこで見えてきたのは、みんな、心の根底にあるのは、(現状を)本当により良くしたいという思いや気持ち。言葉遣いや語気などももちろん大切ですが、その奥にある気持ちです。この人は本当は何を伝えたいんだろう、求めているんだろう、とか「実は自分も相手も向いている方向は同じなのかも」という部分ですね。


やっぱりみんな、良かれと思ってやっているんです。相手に嫌がらせをしたいとかではなく、意図があってやっている。その意図は意外と純粋なものだったりする。それが、相手にうまく受け入れられないと、「分かってくれない」と傷ついたりイライラした態度になってしまったりすると思うんです。


「みんな良かれと思ってやってるんだな」という気づきは自分にとって大きなものでした。それが分かると、何を言われても腹が立たなくなりました。みんな辛いんだな、とかちょっと頑張りすぎだな、とかそんな風に思えるようになってきたんです。


これって、実はとてもシンプルなことだと思いますが、職場だけでなく、家庭でもプライベートでも使えると思います。
やっぱり相手が大切な人であればあるほど、きちんと伝えることができればと思うはず。ただ、それが表面的な言葉の食い違いでお互いに伝わらず、関係性がうまくいかないのは、やっぱりもったいないですよね。


今は幅広い年齢層の人が働いていて、価値観も多様です。自分の意図を伝えて、気持ちよく相手も働いてもらえるような、伝え方のプロをたくさん会社の中で育成していきたいと思っています。
私は管理職なので、社長や役員と話をする機会も多く、ストレスを感じる場面もありますが、きちんと伝えて、渡り合えていけるようにと思っています。そういう対応ができるようになるまでは、アサーティブの講座を受けたいと思っています。


ストーリー②「個人主義だった私が、相手を尊重し、チームの大切さに気づくまで」を読む