③「自分に負い目を感じず伝えられるように」

③「自分に負い目を感じず伝えられるように」

職場におけるコミュニケーション問題のひとつに、世代間ギャップによるものがあります。若手社員とベテラン社員が「お互いにどう関わっていいのか分からない」という問題です。外資系メーカーに新卒として入社したMさん(20代女性)は、学生時代までまったくコミュニケーションに問題のない人生を送っていました。しかし、入社後、周りとのコミュニケーションでつまづくことに。

みんなの受講データ

  • 初回受講時期:2016年3月
  • これまで受講した講座
    基礎講座、応用講座

年上とのコミュニケーションの方法が分からない

今の会社に入り、年上の方とのコミュニケーションにつまづきました。学生時代まではコミュニケーションで困ることはありませんでした。就職活動の時期はたくさんの年上の方と話しましたが、自分から伝えることにフォーカスしていたので、お互いのキャッチボールという部分まで意識できておらず、年上の方と話すという経験があまりなかったのだと思います。


入社後、年上の方とのコミュニケーションについて、こんな言い方をするんだ、という驚きに似た違和感がありました。例えば何気なく言われる「若いよね」という言葉が、自分にとっては少し傷つく言葉だったり。年上の方と働いて初めて感じた感覚でした。言われた時、どう返していいのか分からなかったんです。


また、本社は海外のため、私が所属している部署は海外とのやりとりが仕事の大半を占め、若手を育てるという発想や文化がない状態だったと思います。久しぶりに入った新卒にどう関わっていいか分からない、そんな感じでした。
そんな中、チームの人にも話しかけづらく、向こうからも話しかけてくれない。話しかける時にもどれくらいの丁寧さで話すべきなのかつかめていなかった。恐縮しすぎてもだめ、くだけすぎてもだめですし。


当時は、気を遣ったつもりで「〇〇さん、なんとかでなんとかで…」と要点をまとめて話そうとして、相手の反応を待たずに一方的に話してしまっていました。「今、話してもいいですか」と間を置いて話した方がいいよと指示されたこともありました。当時の私の伝え方は、周りからすると切羽詰まっているように見えていたんだと思います。

対等に接してくれるサポートと、変わりたいという思い

自分のコミュニケーションに限界を感じて、先輩のOさんに相談したところ、スキルで変えられる部分もある、と言われてアサーティブに興味をもちました。普段から様々な部署の方と話す中、一番対等に話してくださる方がOさんだったんです。Oさんは社内でもAJの研修を企画されたりしている方でした。


Oさんからは、何に困っているのか、どう話したらいいのか、ということを月に一度のペースで教わりました。とても丁寧に教えていただき、対等に話してくださる、誠意のある感じでした。
他の方だと「この人に教えてあげなきゃ」という目線を感じてしまいますが、Oさんとは、上から言われている感じがまったくなかったんです。


私は、自分の思いを伝えることは楽しいことだと思っていましたが、相手と何かを一緒に決めていったり、意見の食い違い合うような仕事のシチュエーションで、自分の意見をうまく伝えられないことが多々ありました。
また、自分がはっきり物事を言う割には、相手に返されると、相手の言ったことが正しいような気がしてきて、私が間違ってるのかな、と後ろ向きになっていたんです。こうした気づきはOさんとの対話で生まれたものです。


Oさんは、悩みを聞いてくださるだけでなく、彼自身がどうコミュニケーションの悩みを乗り越えてきたかなども話してくださり、それが私の知見にもなっています。その相談の中で、AJの講座を受けてみたらと勧められました。どうにかこの状況を変えたいと思っていたので、そういうスキルがあるのなら知りたいと思ったんです。
ただ、2日間、しかも土日を使う講座は長いなと、なかなか踏み切れませんでした。しかしある時、Oさんと話しているとき「あっ、今、また言い方につまづいてしまったのは、トレーニングを受けていないから?」とハッとし、すぐ講座に申し込もうと思って受けることにしました。

自分も相手も尊重する、具体的な言葉を学べた

講座では、最初のアイスブレイクでトレーナーの方が真摯に、そして対等に話をしてくれ、安心感がありました。参加する前は正直不安があったのですが、思っているより怖くない!と感じたのを覚えています。


レクチャーの内容は、自分自身が感じていた違和感を言語化できるような感覚でした。例えば、「誠実」「率直」「対等」「自己責任」というアサーティブの4つの柱の話を聞いたときに、以前に言われて傷ついた「若いよね」という言葉が、「対等」から外れたものだったから私は嫌な気持になったんだ、と理解できたんです。
言われた時は、嫌な気持ちになってること自体が自分だけで、おかしいのかなと思っていたが、「若い」も背の高さのように変えられないことの一つ。だから嫌な気持ちになったのか、と納得できました。


ただ、ロールプレイは難しかったですね。何回もやりましたが、なかなかうまくやりきれませんでした。それまでは、ある出来事や行動をフレームワークに沿って考えることを意識したことがありませんでした。ロールプレイでは、アサーティブな伝え方のフレームの構造は理解できましたが、自分の言いたいことをそこに当てはめることが難しかったんです。こんな風に、人に対してまっすぐコミュニケーションしていない、という違和感もありました。


ロールプレイはなかなかうまくできませんでしたが、アサーティブに伝えるための具体的な言い方、言葉を知れたのが一番大きかったですね。具体的にアサーティブになるって、こういう話し方になるんだ、今までこう言っていた言葉をこう言い換えればいいんだ、ということが明確になりました。


他の受講者の方々は、異なるバックグラウンドを持つ人が多いと感じました。見える違い、見えない違い、いろんな見方をもつ人がいるんだと思いましたが、コミュニケーションの悩みに対して、みんなが一生懸命に同じ方向、問題を良くしていきたいという方向を向いている感じが印象的でした。
また、こうした講座はどこの主催のものでも高いのですが、AJの講座は丸二日間の「濃度」を考えると納得のいく金額だと思いました。


自分を卑下することなく対等に話せるように。
そして「さらにアサーティブを知りたい」という思い

講座を受けてからは、具体的な喋り方の改善はなかなか難しかったですが、人に話すときの姿勢は大きく変わりました。「対等」「誠実」の実践です。人と話す時に、自分は年下だからと卑下することなく率直に話すことができるようになりました。
周りにも「変わったね」と言われました。自分でも意識的に変えて、以前よりうまくいってる感覚がありました。今でもその感覚は続いています。


Oさんとのミーティングは続いていて、ある時アサーティブの信念について話してくれたんです。社会的弱者の立場の人が「伝えたいことをきちんと伝えられるように」支援するということもAJの理念の一つと知りました。元々、社会貢献活動に大きな興味があり、会社で働きながらも自分も何か貢献できればと思っていたので、この理念は非常に共感できるものでした。


Oさんの話を聞きながら、今の社会を見渡すと、アサーティブを広める必要がまだまだある、と。例えば障がいを持っている人の発言力や、企業でのパワハラ問題など、アサーティブを広めることで解決につながるのでは、と。
そうした理念を持つ人たちと何か一緒に活動できればと思いました。テク二カルなスキルの部分は、またまだ学ぶ必要があるけれど、本当に自分がしたいことなのか、自分が飛び込んでもいい世界なのか、というのを確かめたくて、応用講座も参加することにしました。


座学も、ロールプレイも、応用講座の方がすんなり内容が理解できたように思います。基礎講座に参加してから一年間、Oさんとの話を通じてアサーティブを意識したり、ビジネスの場でアサーティブなコミュニケーションがされているかどうか観察していたので、そのおかげもあったと思います。


応用講座では、怒りの感情の裏のもう一つの感情があるということを知ることができました。例えば電車の車内でぶつかってくる人への怒り。安全な状況を求めるという希望があってこその怒りということを理解しました。私も会社でも怒りを感じることはありますが、それは自分自身に、こうしたいという希望があるからなんだと受け止められるようになりました。


怒りの感情をもつことは誰もが持つ権利であることも理解できました。ただ、怒りの感情をもった時に、そのままぶつけるのではなく、アサーティブにコミュニケートすること。それを教えてもらえたのはとても大きかったです。


また、アサーティブの「12の権利」の中に「アサーティブでない自分を選ぶ権利」もあり、それもいいなと思います。人から見たら疲れない?と思われるくらい、アサーティブを意識したコミュニケーションをやってしまう自分がいますが、「アサーティブでない自分もOKなんだ」というのは、そんな自分に合っている気がします。


自分の小さな箱から外に出る、そのための考え方

応用講座を受けてからは、日々の実践でアサーティブを行って血肉化している感じがあります。もちろん、うまくいかない場合もあります。自分は怒っていないが、向こうが怒っている時などです。
その時はすごく難しく感じ、どこでボタンのかけ違いが起こったのだろうと思っていましたが、Oさんと話して、アサーティブ的に考えるとこうなる、と複雑な問題への助言をいただき、なるほど、アサーティブってこういうことか!とまた血肉化しました。


私はたまたまOさんというメンター的存在に出会えて幸運だと思います。でもそういった方が周りにいなくても、アサーティブカフェなどもあるので、そうした機会を設けていることは素晴らしいと思っています。


私にとってアサーティブとは、自分の小さな箱から一歩外に出る時のすごく有効な考え方です。
私自分がもっとアサーティブになっていけたら、社会全体の問題も変わっていくと思います。だからこそAJの活動を応援したいし、自分自身もその活動に関わっていきたいです。
将来はトレーナー養成講座を受けようと思っています。ハードルは高そうですが、ぜひチャレンジしたいですね。

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